技能グランプリで得た時間感覚
東京・目黒川に面した趣のあるビルにアトリエを構え、奥様の留美さんとともにジュエリーの製作に携わる、田坂晃洋さん。
「自動車工場で働きながら高校に通っていましたが、車の一部の部品を作るよりも自分の手で一から十まで手がけられるジュエリーの職人になりたいと思い、ヒコ・みづのジュエリーカレッジに進学しました」。
卒業後はジュエリーの製作会社を経て独立。現在はメーカーからのオーダーによるハイジュエリーの製作の傍らで、ヒコ・みづのジュエリーカレッジの非常勤講師を勤め、留美さんと立ち上げたブランド「tentosento」ではオリジナルジュエリーを発信している。そんな中で技能グランプリには4回挑戦。
「学生時代に技能五輪に出場した時にメダルを取ることができず、先生との“金メダルを取ります!”という約束を果たすまで、と挑戦を続け、22年もかかってしまいました」。
2019年と2024年の銀賞を経て、2026年、念願の金賞を受賞。
「技能グランプリに向けたトレーニングを重ねたことで普段の仕事でも効率が上がりました。段取り良くこなすことを考える癖がつき、時間の密度が上がったのは良い経験だったと思っています」。
(写真)美しさとともにつけ心地にもこだわり、リングの内側まで丹念に磨き抜く。
見たことのない世界へと誘う作品
自身のブランドではデザインから石の研磨、彫金まで、留美さんとの共同作業を行う。
「どの工程をどちらが手掛けるかは作品によってさまざま。あえて線引きせず、お互いが得意とする部分を生かし合っています。僕がデザインする場合は、頭に浮かんだスケッチを妻に清書してもらい、製作の過程でバランスを調整しながら立体に仕上げていきます」。
象牙や鹿角を彫刻する江戸時代からの伝統技法「左刃(ひだりば)」の技術も習得。
「学生時代から苦手意識のあった立体造形を学ぶため、近所の彫刻教室に通い、改めて勉強する機会を得ました。伝統技法に貴金属やダイヤモンドを組み合わせることで、新しい世界を生み出すことができれば」。
身につけることができるジュエリー以外に、独自の世界観を放つオブジェも製作する。
「見るだけで人の心を動かすことができる作品を作っていきたいと考えています。自分たちがいなくなった50年、100年先に、誰かが蚤の市で見つけて手に取ってくれる……そんな作品を作っていきたいですね」。
(写真)アトリエにて留美さんと。「もともとは学校の担任と副担任だったので、パワーバランスは彼女の方が上かな(笑)」。




















