社会に出た後に選び直した宝飾の道
昨年秋、山梨県甲府市のアイメッセ山梨で開催された「JJAジュエリーデザインアワード2021」の授賞式。谷戸星香さんは新人大賞、ゲスト審査員賞、日本ジュエリーデザイナー協会会長賞のトリプル受賞で注目を集めた。
「子どもの頃からずっと、ものを作ることが好きで、大学に進む時に建築科を選択、卒業後は空間デザイナーとしてミュージアムや飲食店の企画から施工までに携わっていました。学びの多い職場でしたが、自分自身で手を動かしてものを作りたいという気持ちがずっとあり、今、学び直しておかないと何十年後まで後悔するのでは……と仕事を辞め、ヒコ・みづのジュエリーカレッジに入学しました」。
もともとファッションが好きで、ジュエリーにも興味を持つようになったという谷戸さん。
「最初は工業製品のように思っていたジュエリーが、勉強するうちに人の手による繊細な作業から生まれることを知りました。一度社会人を経験してからの入学に最初は不安もありましたが、意外に私の年齢に近い方や留学生も多く、刺激の多い環境です」。
美しさと装着性を兼ね備えた作品を
2021年には技能検定の二級を受験し、合格。
「工程ごとに“こうすると上手くいく”とコツを掴んでクリアしていくことにゲーム感覚で取り組め、楽しかったですね。そして資格を得たことで、どの工程も“このレベル以上に仕上げたい”という自分の中での合格ラインが上がった気がします。今後、機会を見て一級にも挑戦したいと思っています」。
「JJAジュエリーデザインアワード2021」でトリプル受賞を果たした作品は、学校での課題として制作したものだった。
「シンプルな形ですが実はとても手間が掛かっています。太いラインが徐々に細くなっていくフォルムを自然に美しく表現したかったのですが鋳造では細い部分の強度が心配で試行錯誤を重ね、最終的にシルバーの棒を徐々に伸ばし曲げて制作しました」。
美しさに加え、装着性も重視している。
「ブローチのピンやネクタイピンの留め具などの強度や構造にもこだわっています。就職先では、この人に任せたい、と、思ってもらえる職人になりたいと考えています」。