デザインから製作まで手がける職人
小学校から高校までバドミントンに明け暮れていた上久保泰志さん。
「あまりに打ち込んで、何でバドミントンをやっているのか分からなくなってしまって。大学では違う好きなことに専門的に取り組みたいと思い、九州産業大学芸術学部美術学科に進みました。一年の時に日本画や洋画などもひと通り経験しましたが、表現したいものを一番実現できそうな気がして金属工芸コースを選択しました」。
三年間みっちり実技や金属の特性を勉強。卒業後は仏具や工芸品の道に進む仲間が多い中、あえてジュエリー職人を目指した理由は?
「自分でデザインしたジュエリーをつくって母や姉、ガールフレンドにプレゼントした時に喜んでくれたのが嬉しくて、ジュエリーっていいなと思ったのです。芸術作品と違ってジュエリーは身につけて、その人の一部になっていくことに魅力を感じました」。
卒業後は地元での就職を考え、福岡の宝飾店の工房に。
「最初から磨きだけなどでなく一から全工程を任せていただけたのは良い経験でした。就職前からいずれは独り立ちしたいと思っていましたが、二〜三年では技術が身に付かず、四年お世話になりました」。
地元の宝飾業界との絆を支えに
技能検定はいきなり一級に挑戦して、見事、一度で合格。
「個人でやっていくからには取引先の方がお客様に“一級技能士がつくりました”とセールストークにしていただくためにも持っておきたい資格だと思っていました。
実技は時間が足りなくならないか不安もありましたが、普段から納期に追われ、時間内に丁寧に製作することに慣れていたからか、何とか間に合いました」。
一級技能士取得と並んで目標にしていたのが、デザインでの受賞。「福岡の老舗で工房も共有させていただいている宝石・時計いのうえの社長が同じ夢を持ってサポートしてくださいました」。
応募作は九州初のグランプリに輝き、大きな話題を呼んだ。
「今回は木目金の作品で受賞しましたが、色々な作風で一級品をつくれるようになりたいです。“つくりがわかるデザイナー”でありつつ“デザインがわかる職人”でもありたいと思います。職人としては技能グランプリも目指したいですね。現在、地元での取引先は六社。信頼して任せていただけるのは、ありがたいことです。福岡は若者の人口比率が高い県ですので向上心を持っている同世代や後輩とも繋がって、盛り上げていきたいと思います」。