身につけた人に喜んでもらえる作品を
少年時代から絵を描いたり粘土や彫刻など、ものづくりが好きだったという福島大志さん。ジュエリーに興味を持ったのは、高校生の時。「友人にアクセサリーを作ってほしいと依頼を受けて、ホームセンターで材料を買い込んで見よう見真似でネックレスを作ったらすごく喜んでもらえたんです。それが嬉しくてジュエリーを学べる学校を探し、ヒコ・みづのジュエリーカレッジに入学しました」。
デザインと制作を並行して学ぶ中で、集中して緻密な作業に取り組む職人の世界に惹かれるように。技能五輪には先輩たちの活躍を見て興味を持ち、担任の先生に勧められて挑戦。2年生で参加した第60回技能五輪全国大会で銀メダル、翌年の第61回大会では金メダルを受賞しました。
「授業のない日や夏休みも教室を使わせていただいて、一緒に受ける人たちと練習を重ねました。大会の1ヶ月前には課題作品の形状や寸法が発表され、“答えのある課題”の精度をいかに上げていくかというスタイルが自分には合っていたのかもしれません」。
“世界”を経験して、次の舞台へ
技能五輪全国大会で優秀な成績をおさめた選手は、2年に一度開催される技能五輪国際大会に挑戦することができます。福島さんが参加した第47回大会は、フランスのリヨンで開催。60の国と地域が参加し、59職種の競技が行われました。
「前回はコロナ禍で大会の中止や延期があったので、参加できなかった先輩の思いを背負っての出場だったことが一番のプレッシャーでした。国内大会と違って課題は競技当日に与えられるので、どんな課題を与えられても臨機応変に対応できるように過去の課題に向き合い、図面を見てすぐどう作るか考える訓練を重ね、本番に挑みました」。
結果は、銅メダル。貴金属装身具職種で日本が銅賞以上のメダルを獲得するのは2011年のロンドン大会以来の快挙となりました。
「嬉しさと悔しさが半々の気持ちでした。でも、各国の代表選手と交流してインスタのアカウントを交換したり、料理が口に合わない日があって持参した味噌汁とご飯でしのいだことまでも、すべてが良い思い出です」。
(写真)大会風景-フランス・リヨンでの第47回技能五輪国際大会の競技の模様。競技は課題(図面)にしたがって4日間22時間で作品を製作。指定寸法に材料を切り出し、やすり掛け、ろう付、表面の仕上げを全て手作業で行い、どれだけ正確に、美しく丁寧に仕上げられているか厳正に採点される。
卒業後は、株式会社ミキモト装身具に就職。
「一点物にも量産品にも学ぶことがたくさんあると思うので、今の熱量を絶やさずに、先輩方に指導していただき、仲間と切磋琢磨しながら技術を磨いていきたい。そして次は技能グランプリに挑戦したいと思っています」。

