映画の小道具さんから宝石研磨の道へ
 大学卒業後、映画の小道具の仕事に就いた大城かん奈さん。
大学卒業後、映画の小道具の仕事に就いた大城かん奈さん。
「ご飯を食べる場面ならメニューを考え、用意する。小学生の部屋が舞台なら勉強机の上にある消しゴムまでが範囲。準備もあるし、現場にもずっとつかないとならないし、楽しくやっていましたが、その倍ぐらいしんどかったです」。
そんな中で出会い、興味を持ったのがジュエリー製作の世界だった。
「登場人物の結婚指輪…それも新品でなく何十年も身につけ味のついたものが必要で職人さんの工房を訪ねたのがきっかけでした」。
仕事を辞め、ジュエリーを学びたいと山梨県立宝石美術専門学校へ。
「山梨は地元静岡のお隣でしたし、社会人を辞めての挑戦だったので、日本で唯一の公立のジュエリーの学校で費用が私立ほど高くなかったのもありがたかったですね」。
ジュエリー製作の様々な刺激を受け、卒業後は彫金職人への道を模索するように。
「そんな時、山梨県立宝石美術専門学校で講師もされていて顔見知りだった株式会社シミズ貴石の代表が声をかけてくれたんです。ちょうど県から若手の職人の育成のために一年間だけ助成金が出るタイミングで、それ以降はわからない状態ではありましたが入れてもらい、そのまま働き続けて11年目になりました」。
(写真)平面盤に石を当て、角度やバランスを手で感じながら研磨していく。
原石と向き合い、手磨りで研磨
 宝石の研磨には通常、ファセッターという補助道具が用いられる。大城さんのように山梨県甲府市に伝わる「手磨り」を行う職人は10人に満たないと言われている。
宝石の研磨には通常、ファセッターという補助道具が用いられる。大城さんのように山梨県甲府市に伝わる「手磨り」を行う職人は10人に満たないと言われている。
「師匠の清水について学んだ『手磨り』は、規格に縛られずその石に最も合った形でカットする点が、難しいですが面白いです」。
独自の感性で大城さんが研磨したルースは「カンナカット」と呼ばれファンも多い。
「自分が研磨したルースが造り手さんによって思いがけないデザインのジュエリーになるのも嬉しいです。いつかは自分で宝石の研磨からジュエリーのデザイン、加工までをやってみたいという思いもあります」。
山梨の宝飾産業、宝飾研磨への思いも強い。
「女性で『手磨り』を行う職人は私一人ではないかと言われています。私自身が技術を受け継いでいくことはもちろんですが、鉱物や宝石に興味を持つ人が増え、ここ山梨に若手の職人さんが増えることを願っています」。
(写真)床一面に広げられたラピスラズリ。この中から用途に適した原石を選び出し、研磨する。


 
          














