建築からジュエリーの世界へ進路を転換
千葉県茂原市に広がる大規模な工業団地。ナガホリが運営する「アトリエ・ド・モバラ」は、約70人の職人を有する国内屈指の規模のジュエリー工房だ。入社2年目の山嵜美幸さんは、ここで、石留めを担当している。
「幼い頃から編み物や切り絵などが好きな子どもでした。大学は建築学科に進んだのですが、もっと自分の手を動かしてもの作りをしたいと考えて休学、進路を考え直し、東京デザイン専門学校でジュエリーの基本を学びました。様々な素材を用いての製作に加えて写真撮影やプレゼンテーションの手法などのデザイン全般の授業を受ける毎日は、とにかく楽しかったですね」。
進路を変更した分、社会に出たのはストレートでの大学卒業よりも1年遅くなったが、ジュエリー職人の道を選ぶことに、迷いはなかった。「就職活動でいくつかのジュエリー製造職の会社を見た中で、ナガホリは高価格帯のジュエリーも生産しているのが魅力的でした。千葉の茂原は実家から通うには遠くて寮に入ることになりましたが、職人になるからには、という修行の気持ちで入社しました」。
身につけて心地よいものづくりを
「アトリエ・ド・モバラ」では、製品のクオリティと作業効率を上げるため、すべての工程が緻密に検証され、定められている。
「道具はどの位置に置き、作業する時はどんな角度で製品にあてるか……どの製品も一つ一つの工程にかける時間までがきっちり決まっています。
私はまだ壁にぶつかってばかりですが、毎日ストップウォッチで測りながら、もっと早く、もっと正確に、と心掛けています」。
技能検定2級取得にあたっては、工房の設備を使用し、仕事のない始業前や終業後に4ヶ月にわたってトレーニングを繰り返した。
「反復練習することで、単に試験のためではなく普段の仕事にも役立つスキルが身についた気がします。ゆくゆくは石留め以外の工程も習得して、爪が引っかからないといった基本はもちろん、つけ心地の良さまで、身につける方のことを考えられる職人になれればと思います」。